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■1日目 自宅〜塩尻
甲斐駒ヶ岳に登るのなら絶対に伝統の黒戸尾根から!と決めてから数年、やっとその機会が訪れた。登山口から山頂まで標高差2200メートル、日本屈指のサディスティックな本コース。早朝に登山口を出発し、通常は途中の七丈小屋で泊まる事になる。途中の水場はあてにならないので、一緒に担ぎ上げなければならない。
一日の行程の標高差が大きかった経験と言えば、笠ヶ岳からクリヤ谷の下りコースだ。そうか、あそこを登るようなものか・・・。しんどくなったら引き返して、登山口のキャンプ場に泊まって帰ってくると家族に言い残して、臨時急行「ちくま」で不快指数200%の関西を後にした。
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大阪駅は登山者の熱気で余計に蒸し暑い |
塩尻駅の待合い室で始発の「あずさ」待ち |
■2日目 塩尻駅〜小淵沢駅〜竹宇駒ヶ岳神社〜七丈小屋テント場
6時50分、小淵沢駅に到着。やっぱり、というべきか小淵沢駅に降りた登山者は誰もいなかった。大抵は茅野駅で降りたようだ。改札を抜けると予約していた駅前のタクシーの運転手さんが待っていてくれた。「今日、駒ヶ岳神社に何人運びましたか?」「うーん、3時ごろに一人だけ予約があったようだけど。」1年で1番山が混む日・海の日の連休の初日をもってしても、黒戸尾根は静かなようだ。
7時15分頃、竹宇(ちくう)駒ヶ岳神社の手前の駐車場に到着。料金は4000円位だったか。駐車場には車が少ない。そんな中、女性2人組が出発準備をしているのを発見し、大いに安堵する。「人が多い山は嫌だけど、人がいない山はもっと嫌」な私にとって、同じコースを歩く同士は心強い存在だ。彼女たちもテント泊の様子。
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がらんとした駐車場。本当に連休初日? |
ここで水を汲んでおきましょう |
7時30分、いよいよ出発。駐車場からしばらく歩くとすぐに駒ヶ岳神社に。鳥居の横から豊富にでている「南アルプス天然水」。ここで水を汲んでおく。1.5リットルにしようか迷ったが2.5リットルに増やした。この選択が正しかったことを、後々痛感することになる。安全祈願をして改めて出発。
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いざ出陣!気合いを入れる |
尾白川にかかる吊り橋 |
吊り橋を渡るとすぐに鬱蒼とした樹林の登山道となる。道は落ち葉で敷きつめられて、道幅も広く非常に歩きやすい。平坦な道もあり、正直驚いた。もっと木の根の這った急登かと思っていたからだ。ただ、気温が高く、風が一切ないので汗が吹き出す。最初、すぐ後ろを歩いていた女性2人組のペースが落ちたのか、その後一切会わなくなってしまった。
2回の休憩を挟んで10時5分に笹ノ平に到着。先に休憩をしていた男性2人組に入れ替わって休憩。この男性2人組と小屋まで抜きつ抜かれつ同じペースで歩くことになる。ここまでで、全ての水の半分を消費。行動食をとっていると、突然足音を立てずにランナーが走り抜けていった。食べているものを吹き出す位に驚く。黒戸尾根で出会った、日帰りピストンのつわものの一人目だ。本当に日帰りピストンする人がいるんだ!と改めて驚く。
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サウナ状態で汗がダラダラ |
笹ノ平でしばしの休息 |
相変わらず汗は吹き出してくるが、登山道としては険しくはないと感じた。これなら、大杉谷の堂倉滝から大台ヶ原までの急登がよっぽど凄かったで!…と今までの辛い経験と比較して、自分を励ます。途中でデカいザックを担いだおじさんを抜かした。そうこうしているうちに、木々の間から稜線がチラチラ見えてきた。そして左側に鳳凰三山と富士山が見え出し、岩場になったな、と思ったところで11時20分、刃渡りに到着。
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うぉ!富士山が見えてきた! |
刃渡りでしばし遊ぶ。ふざけちゃいけません |
刃渡りの途中で足場を安定させて、写真を撮ったり八ヶ岳を見たりしてゆっくりと越えた。特に危険はないと感じたが、雨が降っていると恐そう。ここでお昼を食べている方、数名。その名に反して、のんびりムード漂う刃渡りを過ぎ、ここから梯子が続く道となる。こちらに落ちてくるかのような角度の大岩の横の梯子を登って、刀利天狗に11時50分到着。
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刃渡り上部から足下を写す |
刀利天狗で気合いを入れ直し |
刀利天狗からは黒戸山を巻いて、いったん下りに。12時40分、五合目小屋に到着。ここでやっと、目指す甲斐駒ヶ岳とご対面。・・・それはいいとして、どうみても垂直にしかみえない峰々が立ち塞がっているが。あまり深く考えるのは止めよう。現実逃避するために五合目小屋の中を覗くと、ガス缶が並べられていて、使用された跡があった。
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切り株の道標がなごみます |
五合目小屋は立入禁止ですよ |
やっと頂上付近が見えてきた! |
石碑や石仏が乱立していてちょっと無気味 |
小屋から少し下ると広場があり、おじさん数人が休憩をしていた。この広場の横から梯子や鎖の連続する岩場が続き、急登の代名詞・黒戸尾根が本領を発揮しだす。また、険しい沿道には石仏が何体も安置されていて、霊山の雰囲気が色濃くなってくる。なんでまあ、こんなところに登山道を作るのかなぁ、と半ば呆れながら垂直に高度を稼いでいった。振り向くと、黒戸山が眼下に。急登は確かに辛いが、どんどん稜線に近づいているのを体感できるのは楽しい。
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見よ!このふざけた梯子のかかり具合を |
わっせわっせビールの為にがんばろう |
一体いくつ梯子を登ったのか分からなくなった頃、白い人工建造物が木々から見えた。やった、着いたのだ。七丈小屋に。13時35分到着。
本当に小さな七丈小屋を覗くと、多くの人で賑わっていた。ザックを外に置いて、小屋の中の突き当たりのドアをノックすると、小屋番さんが出てきた。宿泊名簿に書き込んでいると、近くにいたおじさんが「へ〜、テント泊かぁ。」と一言。そうだ、テントを担いで私でもここまで来れたのだ。達成感がじわじわとこみ上げてきた。迷わずスーパードライ・ロング缶を購入。
小屋の外の高台で携帯電話で家に連絡。「えー?もう着いたん?早いやん。地図では8時間になってたけど?」何年前の地図やねん。電話を終えて、テント場へ。ところが、第二小屋の横にまたしても梯子が!しばらく登山道を登って待望のテント場へ到着。この時点でわずか2張りのみだった。
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やったー!七丈小屋に着いた! |
・・・また梯子ですか? |
事前情報通り、非常にきれいに整地されたコンフォータブルな空間。安眠を約束されたも同然だ。しかも鳳凰三山が正面に見えるナイスビュー。ところが、あれよあれよというまに、登山者が続々と到着。テントでいっぱいになった。後で、さらに上にあるもうひとつのテント場に散歩がてら見に行くと、そこには3張りしかなく、非常にゆったりとしていた。少し後悔。
しかし、やはりここは天下の黒戸尾根のテント場。19時になると明日に備えて、全員軍人のごとく一斉に就寝。
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鳳凰三山に乾杯! |
テント場は盛況でした |
2日目は[甲斐駒ヶ岳 仙丈ヶ岳 Part2]に続く!
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