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■1日目 自宅〜市ノ瀬駐車場
白山はわたしにとって思い入れの深い山なのだ。12年前に母親から「盆休みは山に泊まるから」と言われ「靴とレインウエアは買っときや」とだけ命じられる。「登山」とは一体どういうものなのか、また、「山で一晩過ごす作法」がまったくわかっていなかったあの頃(遠い目)。
掟破りの全身綿100%の服装でなんとか室堂に到着後、山小屋に風呂がないこと、また洗顔料、歯磨き粉を使ってはいけないことを、そこで初めて聞かされ、母親と一触即発の事態に。それでも、あの時感じた景色の素晴らしさ、心地よい疲労感、ビスコの美味しさが私に強烈な印象を残し、今日テント装備で再訪するまでに至ったのだ。・・・すみません、前置きが長くて。
そんな訳で、いつもの山のお友だち、Kご夫妻とやりとりしているうちに、一緒に行こうと段取りがまとまった。しかも今回、Kご夫妻の山岳テント泊デビューに立ち会う。夫婦喧嘩したらテント泊はこれっきり、とのことで最後の見届け人になる可能性もなきにしもあらずだ。三ノ宮で拾ってもらって、いったんKご夫妻の自宅へ。一同、体重計でザックの計量(だいたい3人とも11〜13キロ)、リングに向かうボクサーのようだ。そして一路、石川県白山市の市ノ瀬へ。
■2日目 市ノ瀬〜別当出合〜南竜ヶ馬場〜御前峰〜南竜ヶ馬場
現在、夏山のピーク時は、市ノ瀬と別当出合間は自家用車禁止、シャトルバスでの移動となる(大型・マイクロバス、タクシー、軽自動車、二輪は通行可能なようです)。12年前は別当出合まで自家用車でいけた。これは12年前と変わったことのひとつで、後でまた続々と12年間の変貌を知る事になる。
シャトルバスが始発の5時からバンバンでている模様。片道400円を支払って、5時30分のバスに乗り込む。わずか20分程で別当出合に到着。立派なビジターセンターができている。また、台風で流失した橋に変わって立派な吊り橋ができている。ここで、準備中に雨がザーッと降ってきて、雨支度をしたらすぐ止んだ。6時20分出発。
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ここが白山登山の玄関口・別当出合 |
砂防新道は立派な吊り橋を渡ってスタート! |
崩落や土砂の流出によって幅が広がった沢を渡る。蒸し蒸しとした樹林帯を登るうちに大量発汗。これは先週の黒戸尾根と同じだ。体内の毒素が吐き出されているようだ。登山者は多く、賑やか。日帰り行程の人はペースが早く、どんどん抜かしていく。7時に中飯場到着で、一旦水分補給。
中飯場を出発してしばらく登ると、まるで公園の遊歩道のような登山道となり、そこからは巨大な砂防堰堤が遠望できた。巨大なので真近に見えるが。これも前には無かったものだ。「何億円かかってるのかな?」なんて言いながら眺めた。
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中飯場。翌日はとんでもないことに…! |
初テント山行にして軽やかな足取りのKさん |
すっかり階段状に整備された登山道を歩き、別当覗きという場所に7時40分到着。白いガスが邪魔して、覗いても何も見えない。見えるのは崩落した山肌だけ。「真っ白でまさしく白山ですね」なんてしょーもないことを言いながら階段登りは続く。
8時20分に甚ノ助非難小屋に到着。小屋の広場のベンチでは多くの人が休憩をしていた。テント泊装備から山小屋泊まり、日帰り装備、またはスニーカーという軽装な方までバラエティ豊かだ。12年前の自分はもっとも軽量級ランクの、いや、まったくわかっていない部類の装備だったことを思い出す。あまりにも軽装なハイカーには「一言いってもいいかしら?」と過去の自分をかえりみず、あくまで心の中で説教をする。
ここから、段々晴れてきて、夏山らしい深緑の稜線が見えてきた。蒸し暑さもマシになってきた。エコーラインの分岐までは急登だったことは覚えていたが、今回は特に苦しさは感じなかった。砂防新道とエコーラインへの分岐にくると、一気に展望が広がる。右には高原状に広がる台地に、ぽつんと南竜ヶ馬場の南竜山荘の赤い屋根が、左には青い空に緑の山肌の中を、気持ちよく伸びていくエコーライン。
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甚ノ助非難小屋。いい間隔で休憩場所があります |
右前方に南竜ヶ馬場。開放的〜! |
一気に沿道の花が増える。しかも色とりどり、数種類の「お花畑」。12年前に母親が、花がすっかり無い白山にがっかりしていたことを思い出す。とにかく、後で調べようと、とりあえずデジカメで撮りまくり。「地図に書かれている『お花畑』ってこういう状態なのね〜。こんなの初めて!」とKさん。わたしもまったく同じだ。
ゆっくりペースで景色とお花を堪能、ミヤマキンポウゲで斜面が黄色に染められた沢を渡り、わくわくしながら南竜山荘に9時20分に到着。持ち込みのテントは一人400円也。さらに山荘から沢を渡り、ハクサンコザクラが満開の木の階段を登りテント場到着。
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ミヤマキンポウゲで斜面が黄色に染まる |
テント場にも花が咲いています |
スノコがあったので使おうとしていたら、これは予約の貸しテント用のものだとバイトのお兄ちゃんに注意をされる。スノコは100円で貸し出してくれた。周辺には、炊事用の小屋もあり、雨が降っても大丈夫そう。スノコを借りに行った時にめざとくビールを発見。段ボールに書かれているのを見ると
・松井選手も飲んだ白山限定一番搾り!
・○堂よりも50円安い!
と書かれている。「へ〜っ!室堂より安いって書いてますよ!」などと盛り上がっていたら、バイトのお兄ちゃん、「あっ、この○の字は、食かもしれないし、室ってわけじゃないんですよ!」と言い訳。
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テント場と南竜山荘はこの通り離れています |
さーて身軽になって山頂の御前峰へGO! |
身軽になって、山頂に向けて10時40分に再出発。さっきの道を戻る途中で、クロユリが群生しているのを見つけまたまた足止め、そして分岐まで戻りエコーラインを登る。ここで30名ほどの団体が先行。まあ、急ぐ訳ではないからと、お花を見ながらゆっくりと進む。確か、ここの急登をがんばれば緩やかな台地状になるはず・・・と記憶通り、室堂や山頂の御前峰を見渡せる、抜群に気持ちのよい登山道となる。そうだ、この景色に感動し、この感動を味わいたくて今日まで登山を続けているのだ。
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エコーラインを登る色とりどりの登山者 |
急登をがんばると山頂を見渡せる平坦な道に |
所々にある残雪と湿原の中の木道を、Kご夫妻の奥さんがどんどん歩いていく。カメラ班のだんなさんと私は写真を撮りながら遅れて追いかけていった。エコーラインと観光新道との分岐からは岩ゴロの急登。ここをがんばって12時ちょうど、室堂に到着。
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白山登山のハイライト・木道をゆく! |
室堂直下は大岩ゴロゴロの急登 |
室堂は受付、売店、食堂のある本館が、想像以上に立派な建物になっていてびっくり。宿泊棟はそのままのようだ。休憩を兼ねてお昼ごはんを食べた。思い出の味・ビスコも食べたが、口の中の水分が奪われて今回はイマイチ。
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まあー、すっかり立派になった室堂! |
最後のがんばり、御前峰に向けて出発 |
12時20分、白山山頂に向けて出発。まったく遮る物がないハイマツ帯の急登。クロユリ、クルマユリが沿道を飾るので疲労も半減。前回は同じ道を、ご来光を見るために真っ暗な中歩いたっけ。そして13時ちょうど、御前峰の祠に到着。
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絶妙なカラーリングで咲いている数々の花 |
天上界と地上の境界線を越えます〜! |
ひたすら登るべし!登るべし! |
無事到着です。おみくじを引いたら「小吉」 |
ガスの切れ間から池がちらーり |
さあて、室堂に帰りますよ |
条件がよければ北アルプスが見えるのだが、すっかり午後を回り、厚い雲で邪魔されている。テントウ虫をデカくしたような、謎の昆虫多数が飛び回っていた。展望が無いのでさっさと室堂へ戻る。室堂ではKご夫妻の奥さんとビールを飲む(私は生ビール)。禁断の山行途中のビールだ。背徳のビールですっかり元気を取り戻して(?)、14時20分、トンビ岩コース経由で下山する事にした。
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きゅーっと生ビールを飲む! |
トンビ岩に登るバカ Photo by Kさん |
トンビ岩コースは花は少ないが、エコーラインの展望が気持ちのよい道だ。ハクサンシャクナゲがまだ咲いていた。途中のトンビ岩でお互いに面白しろ写真を撮って、15時30分テント場に帰還。テント場はすっかり夏休みの小学生の団体を始め、他の登山者で大賑わい。これは夜が心配だ。それでも、広いテント場のスペースはゆったり。
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小学生をはじめテント場は大盛況に |
お馴染み・ビールで山に乾杯のショット |
16時ぐらいから、○堂より安い「白山限定一番搾り」を飲みながら夕食にとりかかる。本日のメニューは、登山ショップで買った、インスタントのパスタ。Kご夫妻もパスタ(山岳用ではない、家庭用のパスタ)で、ソースはキュー○ー。味見で頂いたら、断然キュー○ーの方が美味しい。やっぱりすごいぞ、キュー○ー!18時半ぐらいまで楽しい食事タイムが続いた。単独では、ささっと1時間もかけない。まさに栄養補給のみ、といった感じなのだ。これで、テント泊の楽しみが一つ増えた感じだ。
■3日目 南竜ヶ馬場〜砂防新道〜別当出合〜帰宅
5時にテントから出るとガスで真っ白。昨夜は星空がきれいだったのに。本日は、別当出合まで下るだけなので、たっぷりと時間はある。ゆっくりと朝食をとっているうちに、6時半頃から雨が降ってきた。30分ほどで上がったので、付近のお花畑を散歩。別山に向かう木道は北アの雲ノ平を小さくした感じ。今度は別山の方にも縦走してみたい。テントを撤収して、8時に下山開始。
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小雨が降る朝のテント場 |
別山へ向かう木道・ガスがいい感じです |
砂防新道までくると、始発のバスでやってきた登山者と出会うようになる。ここからは延々と登ってくる人とのすれ違い。単独、家族、グループ、山の会、地元高校山岳部、ツアー団体、小学生の大軍団・・・、現代登山の縮図を見た!何度「こんにちは」を言っただろう?小学生が駆け降りて抜かしていく。こりゃ、お中元シーズンの週末のデパート並みだな。渋滞に巻き込まれながらゆっくりと下山、別当出合に11時到着。
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ひっきりなしにすれ違う人・人・人・・・ |
中飯場。人で小屋が隠れています! |
別当出合の吊り橋が見えてきました |
駐車場も満車になっていました |
花や紅葉の時期に合わせると混雑は必至、山の見どころを避けて静かな山を楽しむか、悩ましい所だが、今回は花やテント泊を存分に楽しめたので結果オーライ。
後日、Kご夫妻にメールしたところ、またテント泊をしたい、と返信がきた。最後のテント泊にならずによかったと安心した。
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