針ノ木峠〜蓮華岳〜船窪岳〜
烏帽子岳〜高天原〜赤牛岳〜黒部ダム
Part1
北アルプス2007年8月12〜16日4泊5日

暑くて短かった夏、2007。マイナーピークと温泉の旅
行程
1日目●扇沢〜針ノ木峠〜蓮華岳〜北葛岳〜七倉岳〜船窪小屋テント場
2日目●TS〜船窪岳〜不動岳〜南沢岳〜烏帽子岳分岐〜烏帽子小屋テント場
3日目●TS〜野口五郎岳〜水晶小屋〜岩苔乗越〜水晶池分岐〜高天原山荘
4日目●高天原山荘〜温泉沢〜温泉沢ノ頭〜赤牛岳〜読売新道〜奥黒部ヒュッテテント場
5日目●TS〜平ノ渡〜平ノ小屋〜黒部ダム〜(トロリーバス)〜扇沢
  
行動時間
1日目●11時間
2日目●9時間10分
3日目●11時間
4日目●10時間55分
5日目●7時間

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■はじめに

まずはじめに書いておきます。このコース、計画は絶対おすすめできません。
1日のコースタイムが10時間前後というのにまず無理があります。 そして、一部の縦走路を除いては難路が続き、時にはルートファインドの技術も必要です。
以上をふまえた上で、長い5日間の山旅の記録におつきあいください。


困難なことを後回しにするのは人の常である。少なくとも私がそうだ。

北アルプスの縦走路で残すところは難路ばかり。今年中にぜひとも歩いておきたい蓮華岳から烏帽子岳の間。赤牛岳から読売新道を下り、平ノ渡を経て黒部ダムに降りるのもずっと憧れていたルートだ。はじめての北アルプスの縦走で悪天に泣いた裏銀座も歩き直さなければならない。ここを一気につないで、途中、我が心のふるさとである高天原温泉に再訪すべく、いったん大きく下って登り返す。夢の無鉄砲プランのできあがり。

計画書には1日目針ノ木峠泊り、2日目船窪小屋テント場泊り、としておいた。


■1日目 扇沢〜針ノ木峠〜蓮華岳〜北葛岳〜七倉岳〜船窪小屋テント場

計画では本日は針ノ木峠まで。しかし、時間的に中途半端なので一気に船窪小屋まで行きたいところだ。スタートから悶々と悩みまくる。「針ノ木峠に10時に着いたら自分と相談してその先の行動を考えよう」と頭の中で何度も繰り返す。登りって単調な動作の連続だから思考回路も堂々めぐりになんねん。扇沢6時5分発。

夏休み!アルペンルートのチケットを求める人々の長蛇の列 登山口から少し歩いたところ。久しぶり!針ノ木岳、スバリ岳

アルペンルートの始発待ちの人々の行列の横を通り過ぎ、ターミナルの左手にあるひっそりとした登山口からスタート。喧騒のターミナルから一歩登山道に入ると、やはりここは北アルプス。鬱蒼とした樹林帯には熊の気配がする。行き交う人々はみな熊鈴を鳴らしたり、手をたたきながら歩いている。何度か車道を横切り、沢を幾筋も渡ると大沢小屋に到着、7時15分。ザックを降ろしたら背中から湯気がもわーっと立ち昇った。暑くてたまらない。

大沢小屋。軽アイゼンのレンタルあり。500円 パックリ口を開けている雪渓の取り付き部

クールダウンしてから大沢小屋を出て、樹林を抜けるとやがて針ノ木雪渓が目の前に現れる。ああ、早くあの涼しい雪渓の上を歩きたい。岩場のトラバースを経て、雪渓下部に着いたところで戸惑う。取り付きの雪渓は下層部が溶け、スノーブリッジ状となり、ぱっくりと開いた隙間から轟々と水が流れているのが見える。えーっ、雪渓に乗ったとたんに足元が崩れて、扇沢まで流され帰されたらどないしよ、と思いながらすばやく雪渓の左側に移動する。

夏道から雪渓上部を見下ろします 雪渓から夏道に。浮き石が多くて不安定でした

そこからはステップに沿って淡々と登るだけ。ああ涼しい。ペースも好調だ。雪渓上を歩き出してから1時間くらいで夏道に変わる。ここから少々不安定なガレ場となる。途中で地図上に表記している水場を不精して通り過ぎる。これが後で大きく影響することになる。丸太で整備されたスイッチバック状の登山道になると針ノ木峠はすぐそこだ。目標の10時ちょうどに到着。

針ノ木小屋前からのスバリ岳。大好きな山です 小屋前から種池、爺ヶ岳。後立山には雲がわいている

これから歩くはずの烏帽子岳までの激しく標高差のある稜線に目を見張る。所々、崩落により山肌が白く露出しているのが痛々しい。一番奥には槍ヶ岳まで見える。小屋前のスペースにザックを転がしてしばし見とれる。


緑深い七倉岳から烏帽子岳への稜線。一目見てこのコースの激しさを実感

さて、ここからどうしよう。おにぎりを食べながらひとり作戦会議だ。扇沢からここまでコースタイムより1時間短縮している。針ノ木峠から船窪岳のコースタイムは5時間30分。疲れも出るだろうから休憩も入れて6時間半は見積もっておいた方がいいだろう。そうこう悩んでいる間に、蓮華岳に向けて縦走装備の登山者が次々と出発している。これが最終的に私の背中を押し、前進することになった。

蓮華岳への登り。平和だったひととき 連日の猛暑でぐったり?枯れかけのコマクサ

蓮華岳へはたいした岩場もなく緩やかに登っていく。コマクサはすでにドライフラワー化していたが、それでも厳しい環境のなか、けなげに咲くピンク色の可憐な小花には癒される。緩やかな丘のような登山道を越えて蓮華岳到着、11時10分。針ノ木峠で次々と出発した登山者が蓮華岳をすでに下っていっているのが見える。どう見ても私が一番最後尾だ。残りの水も最後までもつだろうか。あらゆる不安を抱えて「蓮華の大下り」へ。約523メートルも標高を下げる。


蓮華岳山頂付近から、北葛岳、七倉岳を見る。激しいアップダウンが待ち構えています

下り始めは瓦礫の道。滑らないように下っていく。途中で白いコマクサを発見。やがて急坂となり、梯子、ロープが出てくる。つまづいたら大怪我必至だろう。北葛乗越の手前は特に注意を要する。ワイヤーやロープを頼りに慎重に下る。

いよいよ「蓮華の大下り」。下り始めはコマクサのお花畑 目立つこの岩場の先からガクンと急坂になります
さすが北アルプス。ちゃんと整備されています
乗越から大下りを見上げる。乗越に着く手前が一番危険

北葛乗越に着くとそれまでの緊張がほどけ、歩くのにも力が湧いてこない。北葛岳への長い登りの途中で何度も立ち止まってしまう。水が無くなりかけているのもペースを上げられない原因のひとつだ。いつまでも大気の透明度は高く、名立たる高峰が私の周りに展開されている。しかし、ちっとも浮き立った気分になれない。気温はじわじわ右肩上がりに上昇しているようだ。北葛岳到着、14時10分。やれやれー、という感じで、きゅうりやみかんのシロップづけなど、水分のあるものをザックからあさって食べる。

北葛岳山頂。針ノ木岳のうしろには立山 北葛岳の下りも梯子があります。慎重に
ミネウスユキソウ ヤマホタルブクロ

七倉岳へと至るには、蓮華の大下りほどではないがまた大きく下って登りかえす。横に広い七倉岳山頂部の先っちょに小さな船窪小屋が確認できた。ああ、早くあそこに行きたい。そんな思いで下り始める。梯子、ロープを何箇所かこなして、船窪乗越へ。やっと先行者が見えた。

七倉乗越。あと1時間だそうですがヤル気がないです 乗越から早速梯子。足をかけたらガクンとずれた(泣)

乗越の岩に赤のスプレーで「小屋まで1時間」と書かれている。それで安心したのもつかの間、梯子、ロープの連続の急登で息があがってしまい、本当に参ってしまう。山頂付近が見えたところで「これが最後」と決めてザックを転がして座り込んだ。「もう眠いよパトラッシュ……」しばらくうとうとしていると、ジリジリとした太陽光が惰眠を妨害する。わかりましたよ、行けばいいんでしょ。仕方なしにザックを背負いなおして最後のひとふんばり。


日差しがきつくて暑い!もうひとふんばり
やっと着いた七倉岳。長い一日がようやっと終わった

登りきると七倉岳の山頂はすぐ。長い1日の終わりに心底ほっとする。平坦な道をしばらく歩くとテント場への分岐があり、ここにザックを置いて幕営料を払うために空身で小屋に向う。20キロのザックから解放されても、なぜか足取りは重い。「連泊しようかなー」と考えていると、親子の雷鳥がハイマツから出てきて、ヒナがせわしなくモタモタ歩いている。そんな小さないきものと自分のペースが同じなのが情けなくて可笑しい。

母親がいなくなって慌てる5人の子どもたち 船窪小屋。小屋の前のテーブルで夕食を取り囲む宿泊客

やがて、タルチョがはためく船窪小屋に到着。17時。ふと、白い高峰に囲まれたナムチェバザールを思い出した。宿泊者が小屋の外のテーブルで夕食をとっている。そうやな、もう5時やもんな。玄関先でテントの受付け。ペットボトルの桃のジュースを買って、その場で一気に飲み干してしまったのには自分でも驚く。テント宿泊者の名簿を見ると、この日のページの一番上に書かれている名前に見覚えがある……。

バイトのお姉さんから、今晩ネパールの音楽会が開催されると聞き、小屋に泊りたくなった。テント設営するのめんどくさい。水場が遠いのもうっとおしい。もう今は一刻も早く寝たいだけ。後ろ髪を引かれながらザックを置いた分岐まで戻り、10分ほど下って最後に梯子を降りて本当に最後。テント場着、17時30分。

二段になったテント場はすでにぎっしりと埋まっていた。空いていると思い込んでいただけにこれは意外。戸惑っていると、10時には到着していたらしい本日の一番乗り、たけさん発見。そこでまたまたテントのことを忘れて立ち話。「温泉に行かへん?」軽い気持ちで高天原温泉に行く計画を言うと、幸か不幸かこの計画にのってきた。ここで相反する思いが駆け巡った。「これは心強い同行者ができた♪」「しまった!これでエスケープできなくなったやん」

日没前に行ったほうがいいよー、とたけさんに促されて水場へ。水場はテント場から少し下ったところで、崩落している砂状の崖の途中に設置してある。いかにも無理やり感、ありありである。水場の手前にある梯子が怖い。水を汲んでいる間に、絶えず小石がパラパラと落ちてきて「土砂崩れ!?」と焦る。小屋の方は毎日ここまで人力で汲みにこられるらしい。 テント場に戻って、急いで空いているわずかなスペースにテントを設営。夕食を食べる頃にはヘッドライトが必要であった。もう明日は絶対に寝坊するもん、と決め込んで眠りについた。

2日目は[針ノ木峠〜蓮華岳〜船窪岳〜烏帽子岳〜高天原〜赤牛岳〜黒部ダム Part2]に続く!


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